第11回南方熊楠賞(自然科学の部)
青木 淳一 氏
土壌中にすむダニの仲間の研究に半生を捧げ、日本に知られるササラダニの約半数を新種として記載。また、ダニの研究を通して環境評価や環境診断の基準の確立、日本土壌動物学の確立に大きく貢献し、各界からきわめて高い評価を受けている。
第12回南方熊楠賞(人文の部)
故 櫻井 徳太郎 氏
青年期に柳田國男氏に師事し、その後民俗学諸分野にわたる幅広い研究を手がける。
殊に民俗宗教の分野では、民俗宗教の社会基盤を追究しての論究は学問的論争を起 こし、日本の学会でのシャーマニズム研究展開の軸となる業績が高く評価を得ている。
受賞に際し、「日本民俗文化の特質を抽出するには、少なくとも周辺民族との比較が必要で、南方学の成果を貪り吸収した」とのコメントを寄せられた。
第15回南方熊楠賞(自然科学の部)
故 柴岡 弘郎 氏
植物生理学、細胞生物学が専門。高校生の時の「向日葵は本当に廻るのか」という素朴な疑問がきっかけで植物学の世界に進まれ、「植物はどのようにして生長するのか」という最も基本的な現象のメカニズムを研究され、生理活性物質と植物ホルモンの相互作用により制御されることを解明された。常に時代を先取りする世界的な研究業績によって植物の生長生理学分野を牽引されてこられた。
第16回南方熊楠賞(人文の部)
故 岩田 慶治 氏
1957年以来四半世紀にわたり東南アジアの稲作民族を調査、日本との比較民族学研究を行い、アニミズムの再考を提唱された文化人類学者、人文地理学者。積年のアニミズム研究から、人間にとって必要な根源的な宗教感覚ないしは宗教性を、現代に甦らせた独創的思想家で、岩田学なる独自の学問体系を確立された。
第17回南方熊楠賞(自然科学の部)
故 伊藤 嘉昭 氏
生態学や社会生物学が始動しはじめた時代に、それらの学問をいち早く取り入れ、先駆的な業績を公表し、それを一般に広く紹介した。特に、沖縄のウリミバエ対策事業にかかわり、不妊化オスの放飼による防除計画を策定、実行し、沖縄でのウリミバエの根絶に成功された業績は、生態学が社会に貢献した例として世界的にも高い評価を受けている。また、生態学者の視点と純粋な正義感から、米軍によるベトナムでの枯葉剤使用に対する反対声明や沖縄やんばるの森の自然保護活動など、常に自然保護運動に尽くされた。
第18回南方熊楠賞(人文の部)
故 伊藤 幹治 氏
丹念なフィールドワークと膨大な文献による理論研究により、日本という国の民俗文化を集中的に研究する民俗学(フォクロアー)と世界の諸民族の社会や文化の比較研究を行う民族学(エスノロジー)という二つのミンゾク学の統合の中から新しい日本人・日本文化論の構築された。
それは二つのミンゾク学の交流の原点に位置し、実地調査と文献研究によりその研究を展開させてきた南方熊楠の学問研究の特質と軌を一にするものと、高く評価された。
第19回南方熊楠賞(自然科学の部)
故 堀田 満 氏
草創期の植物分類学の気概と伝統を継承しえている最後の植物学者の一人。
氏の植物分類学の研究はサトイモ科から始まり、数々の分類を手がけられるともに植物の分布形成過程を究明した植物地理学上の功績は高く評価されている。人とイモの関係に関する民族植物学の視点からの論考は、照葉樹林文化論にも大きな影響を与えた。
また、採集された植物標本は約7万点に及び、これらの標本を背景にした植物の多様性に関する圧倒的な知識に基づき、現在もなお、植物をこよなく愛し、植物を求めて各地を精力的に歩きまわり、その保護に心血を注ぐ姿は、南方熊楠翁の足跡を偲ばせる。
第20回南方熊楠賞(人文の部)
山折 哲雄 氏
インドをはじめ、アジアや欧米の宗教思想史の研究を背景にして、日本の民俗文化や日本人の心の問題を広く深く考察し、その考究の深みの中から、日本人の心の問題の未来を見据えた上で、大きなスケールで情報を発信しようとしている。その研究は、欧米の思想を十分に咀嚼し、きわめて広い視野から、日本の民俗文化について考察を加え、日本人のもつ神々の問題や世界観の問題の解明に、旺盛な研究意欲をもって迫ろうとした南方熊楠の研究と通底するところが少なくない。