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南方熊楠研究奨励事業(若年研究者助成事業)2025(令和7)年度 助成研究決定

南方熊楠研究奨励事業(若年研究者助成事業)
2025(令和7)年度の助成研究の決定について

《経緯》
 南方熊楠顕彰会と田辺市では、熊楠研究を行う若手研究者の研究事業を助成、サポートを行うことにより、新たな分野や研究者の裾野拡大を図るため、昨年度に引き続き本年度も南方熊楠に関する助成事業を募集した結果、8件の応募があった。
 各分野の研究者による選定委員会において、各委員が事前に実施した書類審査の評価に基づき、選定委員会の審査会において慎重な審議を行った結果、2件の研究を選定し、南方熊楠顕彰会と田辺市において令和7年度助成研究に決定した。

1.募集期間
  令和7年4月11日(金)~8月10日(日)

2.応募件数
  8件(国内からの申請4件、国外からの申請4件)(人文6件・自然科学2件)

3.審査会
  令和7年9月5日(金)※オンライン開催

4.選定にあたっての留意事項
  ・南方熊楠に関する研究
  ・南方熊楠顕彰館所蔵資料を用いた研究であること
  ・南方熊楠に関する資料を用いた研究であること
  ・その他、応募要項による

5.評価の対象
  ・実行性のある事業計画であるか、また留意事項を満たした計画であるか。
  ・研究成果につながる研究計画であるか。
  ・今後の熊楠研究の展開上、新たな着想、独自性のある研究計画であるか。
  ・南方熊楠顕彰館での調査研究の必要性
  ・経済的必要性 など

6.令和7年度 助成研究(採択研究)

 氏  名  神川 隆(かみかわ たかし)
 年  齢  36歳
 所属・職名  会社員
 住  所   神奈川県茅ヶ崎市
 研究課題  民俗学成立期における同好者・研究者ネットワークと南方熊楠の関係性についての研究

 

 氏  名  野口 英佑(のぐち えいすけ)
 年  齢  30歳
 所属・職名  嶺東科技大学 応用外国語学科 助理教授
 住  所   台湾台中市
 研究課題  帝国議会における代弁者としての中村啓次郎 ―神社合祀反対運動を起点に―

                            ※年齢等は令和7年9月19日時点

7.今後の予定
  ・研究期間:令和7年10月~令和9年3月末まで
  ・助成内容:研究経費に対する助成金の支給、熊楠研究者による研究のサポート、南方熊楠顕彰館や資料等の利用、
        南方熊楠顕彰会出版物の提供など
  ・研究成果:研究終了時に顕彰館へ所定の報告書を提出(講演会や出版物での公表機会を提供)



令和7年度 南方熊楠研究奨励事業助成研究選定について(全体講評)

 本研究助成事業は、南方熊楠顕彰館の所蔵する資料が広く内外の研究者により調査・研究され、南方熊楠の業績についての理解が深まるとともに、熊楠が取り組んだ学問領域への若い研究者の参加をうながし、さらなる貢献がなされることを期待して、平成20(2008)年度から5カ年にわたって第一期が行われました。前途有為な研究者から多数の応募があり、多数の方々がこの助成事業応募を契機として飛躍を遂げ、南方熊楠研究やその他の領域で活躍を続けています。
 この成果を受け継いで、昨年度から南方熊楠研究奨励事業の第二期が行われております。第2回目の今回も、志の高い多数の研究計画の応募がありました。厳正なる審査の結果、2件の研究計画が助成対象として選定されましたが、その他の応募研究も、これからの研究課題として興味深く、可能性を感じさせるものがあり、南方熊楠研究の今後の展開におおいなる期待をいだくことが出来たことは、選定委員一同にとって大きなよろこびです。選定委員会としては、今回助成研究に選定されなかった応募者各位にも、南方熊楠に関する研究への取り組みを続けていただき、また次回以降の応募を検討していただければと考えています。
 今回選定された2件は、対象となる資料と研究方法、及び申請者によるこれまでの取り組みが明確に示され、研究の実現可能性という点ですぐれていることが特に評価されました。
 このうち、神川隆さんの研究計画は、黎明期の日本民俗学を担った各地方の研究者たちの活動及び彼らの間の相互ネットワークがどのように南方熊楠の活動に関わったのかという、未解明の部分が多い課題に取り組むものです。
 また、野口英佑さんの研究計画は、南方熊楠の神社合祀反対運動の重要な協力者である中村啓次郎代議士を中心に据えて、中村の神社合祀政策に反対する政治活動の実相と、それが南方熊楠の運動にどのような意味を持ったかという課題に、新たな光を当てるものです。
 お二人とも、助成研究としての具体的な成果を挙げるとともに、長期的に研究を継続発展させていただけるものと期待しています。
 選定委員会としては、この助成事業をきっかけとして、熊楠の学問や熊楠が残した資料にあらたな命を吹き込む若い研究者たちが今後も登場することを期待しています。そしてその期待に手応えを感じさせてくれた研究計画の応募が多数あったことを、たいへん心強く感じております。

                                                                        南方熊楠研究奨励事業 選定委員一同

 

 

2025(令和7)年度応募要項】

 

事業の趣旨

 南方熊楠(みなかた・くまぐす 1867-1941)は民俗学、文学、科学史、分類学、生態学など、さまざまな分野を横断する学際的な研究と、『ネイチャー』誌などへの論文発表に代表される国際的な学術活動によって知られる人物です。その視野の広さは、現代の学問に対しても示唆するところが大きく、近年ますます注目されています。また、残された資料には、今後、さまざまな学問分野からの解読や利用が待たれる貴重なものが多く含まれています。

 田辺市は、2006(平成18)年5 月、ご遺族からの資料の寄贈を受けて、南方邸に隣接する敷地に「南方熊楠顕彰館」を開館しました。熊楠が遺した25,000 点を超える膨大な資料や蔵書を恒久的に保存し、未刊著作など所蔵資料の刊行事業を行い、書簡・来簡、収集した図書、ノート・メモ類、受贈刊行物など膨大な収蔵品の調査と、それに基づく研究を進めています。

 こうした活動の一環として、南方熊楠顕彰会および田辺市では、2008年(平成20)度から5 年間にわたって研究奨励事業をおこないました。この事業による助成を個人として受給されたみなさまは、その後、南方熊楠研究のみならず、さまざまな学問分野で新進の研究者として活躍を続けておられます。著名な学術賞や、国内外の大学の専任職を得られた方も多く含まれています。

 この成果を受け継いで、令和6年度から南方熊楠奨励事業の第二期を開始し、今年度も実施することといたしました。申請者の学問分野は問わず、なんらかのかたちで南方熊楠あるいは南方熊楠顕彰館所蔵資料に関連する研究であれば、広く受け入れたいと考えております。さまざまな分野からの、意欲ある申請をお待ちしております。

主 催     南方熊楠顕彰会・田辺市

 

参考:南方熊楠顕彰館資料一覧  JAPAN SEARCH  過去の助成者(第一期:平成20~24年度)  熊楠研究

 

 

 

助成内容

〔採用件数〕  2 件以内
〔助成期間〕  2 ヵ年度(令和7年10 月~令和9年3 月31 日)
〔助成金額〕  2 件の総計 50 万円以内(これらを2 年間分とし、1 年目に一括交付する。)
〔助成対象〕  南方熊楠顕彰館資料閲覧やフィールド調査等のための旅費(交通費・宿泊費)、及び調査のための委託費用や物品
 等の消耗品の他、調査研究に必要なものとします。
〔対象研究分野〕  学問分野は問いませんが、次のいずれかに部分的にでも該当すること。
 (1)  南方熊楠に関する研究
 (2)  南方熊楠顕彰館所蔵資料を用いた研究
 (3)  南方熊楠に関連する資料を用いた研究
〔助成対象者〕  (1)   原則として令和7年4 月1 日現在40 歳未満の者(大学院生はこの限りではない)。
 (2)   個人、グループを問いません。
 ※グループの場合には代表者(申請者)を明記してください。高校生までのグループの場合 には指導する教員 (年齢制限なし)を代表としてください。
 (3)   研究機関への在籍の有無は問いません。
 ※NPO 関係者や学芸員など、現場で実践する幅広い方々からの応募も歓迎します。

 

応募・選考

〔応募手続〕  所定の申請書に必要な所定事項を記入のうえ、令和7年8月10日までに事務局(南方熊楠顕彰館)に提出してください。
〔選    考〕  申請書の記入内容(研究計画等)に、助成の経済的必要性を加味して選考し、結果については、令和7年9月中旬に発表すると同時に、申請者に直接通知します。
〔申請書類〕  申請書はこちらからダウンロードできます。
〔応募締切〕  令和7年8月10日(必着のこと)
〔応 募 先〕  〒646-0035
 和歌山県田辺市中屋敷町36 南方熊楠顕彰館
 e-mail:minakata@mb.aikis.or.jp
 ※郵送での受付はいたしません。電子メールで申請書類を提出してください。
 〔そ の 他〕  応募者全員に『熊楠研究』『熊楠ワークス』の最新号を贈呈します。
 応募に際し資料が必要な場合はお問い合わせください。

 

助成決定の研究者の待遇等

 〔待    遇〕  (1) 調査研究を進めるにあたり、南方熊楠顕彰館及び南方熊楠邸の利用等について優遇します。
 (2) 『南方熊楠邸蔵書目録』、『南方熊楠邸資料目録』および『熊楠研究』誌などの南方熊楠顕彰会発行の刊行物を提供
   します。
〔成    果〕  (1)  期間 2 ヵ年度目(令和8年)の9月30日までに、研究成果の中間報告書類を提出していただきます。
 (2) 期間2 ヵ年度末(令和9年3月31日)までに研究成果となる所定の報告書を提出していただきます。
 (3)  成果内容によっては、南方熊楠顕彰館の展示企画に反映させ、特別企画展等に よって成果を広く公表します。
   なお、そのための協力を求める場合があります。
 (4)  発表会、講演会等、口頭発表や南方熊楠顕彰会刊行物への掲載の機会を提供します。
 (5)  本助成を受けた研究成果を発表する場合(一部発表も含む)は、事前に報告していただきます。
 〔そ の 他〕  (1)  選考委員会での審議内容については、いかなるご照会にも応じられません。
 (2)  助成決定時の通知の際に、助成金の送金先の報告等、諸手続について連絡します。
〔お問合せ先〕  事務局:南方熊楠顕彰館
 〒646-0035 和歌山県田辺市中屋敷町36
 TEL:0739-26-9909(直通)  FAX:0739-26-9913
 e-mail:minakata@mb.aikis.or.jp

 

 

南方熊楠研究奨励事業(若年研究者助成事業)

令和6年度 南方熊楠研究奨励事業 助成研究選定・第二次審査会】

(審査会結果:概要)

1.令和6年度の南方熊楠研究奨励事業(若年研究者助成事業)の助成研究選定・第二次審査会は、申請のあった応募研究7件について、選定委員が書類審査により個別評価を取りまとめた集計結果に基づき、再度各応募研究についての評価を出し合いながら、慎重に審議を行った。 審議にあたっては、応募要項の「対象研究分野」に規定する研究計画であるかどうかという観点での協議を中心に行い、下記事項に留意、比較評価し、助成研究選定の審議を行った。

(1) 南方熊楠自身に関する研究計画、熊楠の業績に関する研究計画、または、南方熊楠顕彰館所蔵資料及び南方熊楠に関連する資料を用いた研究計画であるか

(2) 研究成果につながる研究計画であるか

(3) 今後の熊楠研究の展開上、新らたな着想、独自性のある研究計画であるか

(4) 南方熊楠顕彰館での調査研究の必要性

(5) 経済的必要性、等

 

2.審議結果

次の2件が本年度の南方熊楠研究奨励事業の助成研究に決定した。

助成研究①

 研究課題  南方熊楠の神社合祀反対運動―関連資料の多角的分析による全体像の再構築―
 研究者  野村 さなえ(のむら さなえ)
 年  齢  27歳
 所  属  同志社大学大学院文学研究科文化史学専攻
 助成金額  250,000円

助成研究②

 研究課題  南方熊楠のロンドン時代における博物学活動の解明と未発見資料・標本の発掘
 研究者  吉村 太郎(よしむら たろう)
 年  齢  25歳
 所  属  東京大学総合研究博物館・同大学院理学系研究科地球惑星科学専攻
 助成金額   250,000円

                          ※年齢等は令和6年9月20日時点

令和6年度 南方熊楠研究奨励事業助成研究選定について(全体講評)

 本研究助成事業は、南方熊楠顕彰館の所蔵する資料が広く内外の研究者により調査・研究され、南方熊楠の業績についての理解が深まるとともに、熊楠が取り組んだ学問領域への若い研究者の参加をうながし、さらなる貢献がなされることを期待して、平成20(2008)年度から5カ年にわたって第一期が行われました。前途有為な研究者多数の応募があり、多数の方々がこの助成事業応募を契機として飛躍を遂げ、南方熊楠研究やその他の領域で活躍を続けています。

 この成果を受け継いで、今年度から南方熊楠研究奨励事業の第二期が行われることになりました。今回も、志の高い多数の研究計画の応募がありました。二次にわたる審査の結果、2件の研究計画が助成対象として選定されましたが、その他の応募研究も、これからの研究課題として興味深く、可能性を感じさせるものがあり、南方熊楠研究の今後の展開に明るい期待をいだくことが出来たことは、選定委員一同にとって大きなよろこびです。選定委員会としては、今回助成研究に選定されなかった応募者各位にも、南方熊楠に関する研究への取り組みを続けていただき、また次回以降の応募を検討していただければと考えています。

 今回選定された2件は、対象となる資料及び研究方法が明確になっており、研究の実現可能性という点ですぐれていることが特に評価されました。

 このうち、野村さなえさんの研究は、先行研究の多い南方熊楠の神社合祀反対運動について、考察の対象となる資料群を大きく広げて、新たな視座を探求する野心的なものです。

 また、吉村太郎さんの研究は、南方熊楠の生物研究を、ロンドンに残されている標本の追跡から見直す取り組みで、これまで行われずにいた重要なテーマです。助成研究としての具体的な成果とともに、長期的に研究を継続発展させていただけるものと期待しています。

 選定委員会としては、この助成事業をひとつのきっかけとして、熊楠の学問や熊楠が残した資料にあらたな命を吹き込む若い研究者たちが今後も登場することを期待しています。そしてその期待に手応えを感じさせてくれた研究計画の応募が多数あったことを、たいへん心強く感じております。

                   南方熊楠研究奨励事業 選定委員一同