採集用具

 1900(明治33)年イギリスから帰国した熊楠は、翌年10月より熊野にて足掛け3年、約21ヶ月におよぶ植物調査を行った。多くの顕花植物とシダやコケも採集したが、淡水藻を採集し、顕微鏡で観察するためのプレパラート標本を多数作ったことが日記にしばしば出てくる。熊楠がとくに研究した粘菌、キノコ、藻は隠花植物と呼ばれている。隠花植物には他にバクテリア、地衣、コケ、シダが含まれる。南方の隠花植物研究の中で特筆されるのは粘菌であったが、他にも多くの標本がのこされている。
 熊楠の植物採集用具としては、胴乱や籠、野冊、描画道具入り採集籠等が知られている。隠花植物調査はたいてい長期にわたり、山小屋を借りて採集標本を図記するため、絵の具等は欠かせない道具であった。