南方二書

 東大植物学教授であった松村任三(1856~1928)宛の二通の長文の手紙(手紙は1911(明治44)年8月29日と31日に書かれている)である。手紙という形であるが、これは熊楠の「熊野の森」物語である。
 同年9月、二通の手紙は柳田國男の手によって刊行され、志賀重昂ら数十名の識者に配布された。全国でも強力に神社合祀が進められていた三重県と和歌山県下の現状を具体的に詳しく報ぜられている。