龍神山

 奇絶峡の西方約2kmに位置する標高497.3mの山岳で、頂上から南東方向へと続く尾根上にはウバメガシの巨樹を御神木として龍神宮・八幡宮を祀るなど、古くから霊地として崇敬を集めてきた。龍神山の一帯は砂岩・礫岩を主体とする風化しにくい地質で、峡谷が峻厳な崖地を深く刻んでいる。樹間に露出する数多の巨岩の中には、「護摩の壇」と呼ぶ祭祀場も伝わる。樹叢はシイ類を中心に暖地性の植物が混在するなど、南紀地方の海岸に近い植生を示す。『南方熊楠日記』では、龍神山においてカエデを採集したことを記したほか、『南方二書』では、頂上の「闇龗の神祠」が古くからの龍神山に対する人々の崇敬の念を表すのみならず、四方眺望絶佳の地形は子供の教育にも大いに資するとも指摘した。その良好な風致景観は変わることなく現在に伝わる。

 

竜神山とて、上り路三十丁あり。古えは桜樹の名所なりしに、濫伐打ちつづき、土砂崩壊して小川を埋め、毎年洪水絶えず。しかして頂上と書きしところに闇龗の神祠あり。目今日本にあまり多からぬ神にて、『日本紀』などに見えたればもっとも崇敬すべし。この頂上に神池あり、清泉涌出す。
                                             『南方二書』


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