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第21回~第30回南方熊楠賞受賞者

第21回南方熊楠賞(自然科学の部)

故 河野 昭一 氏

 「種生物学研究会」(のちに「種生物学会」に改称)を立ち上げ、数多くの研究者を育て上げるとともに、機関紙「種生物学研究」「Plant Species Biology」を刊行し、植物の種生物学の発展に大いに寄与した。また、日本生態学会自然保護専門委員会委員、国際自然保護連合生態系管理委員会・北東アジア担当副委員長、NPO法人地球環境大学理事長、日本の天然林を救う全国連絡会議代表などとして、日本の自然、特に中池見湿原の保護、各地の国有林における不法伐採の摘発と保護等に大活躍している。その様子は神社合祀に反対し、活動した南方熊楠翁を髣髴とさせるものである。

第22回南方熊楠賞(人文の部)

故 森 浩一 氏

 「考古学は地域に元気を与える学問でなければならない」と主張、研究成果を社会に還元するために労力を惜しむべきではないと、メディアへの対応をいとわないなど、調査研究の優れた業績だけではなく、執筆、講演、シンポジウムの企画立案など多彩な啓蒙活動や遺跡保存への働きかけは熊楠翁の生きざまに通じるものがある。

第23回南方熊楠賞(自然科学の部)

杉山 純多 氏

 フィールドから分子にまで及ぶ幅広い研究を続け、菌類の多様な形態に着目するとともに、環境に応じて変幻自在に変化する菌類について、分子的解析手段を導入してその実体を明らかにし、菌類という生物の生き方の謎の解明に大きな前進をもたらした。 このことは、熊楠翁の抱いていた菌類(変形菌類)の謎の解明につながるものである。

第24回南方熊楠賞(人文の部)

石毛 直道 氏

 食文化研究のパイオニアで、これまで学術的な研究対象となりにくかった「料理」を、それを創作し伝えている人たちの歴史、習俗、暮らし、自然環境などを網羅した生活体系の一つの「食文化」として捉え、人類史的な視野での比較文明論の主要素であることを提示した。未知の食文化を求めて世界各地を訪れ、豊富なデータを集め続けた学問への姿勢は、身近に生息する粘菌を探し求め、世界的学者になった熊楠翁に通じるものがある。

第25回南方熊楠賞(自然科学の部)

井上 勲 氏

 学生時代から一貫して、微細藻類の系統分類学的研究を行い、また「藻類画像データ」をインターネット上に公開して、多様な藻類の世界についての新しい知識を学界・社会に普及させるなど、学術的意義ばかりでなく、啓蒙的な価値の高い研究も行っている。細胞生物学から分類学に及ぶ幅広い研究により、現代的な博物学ともいえる藻類学の分野を推進した業績は顕著であり、南方熊楠翁の博物学を髣髴とさせるものである。

第26回南方熊楠賞(人文の部)

中沢 新一 氏

 宗教学を足掛かりとして、人類学や民俗学のフィールドにも歩みを進め、現在は対称性人類学と呼称される領域を提示しており、従来の学問の枠組みにとらわれない研究成果を実現している。特に、独自のアート感覚あふれるフィールドワークの手法を用いる「アースダイバー」は、注目すべき取り組みである。思想アートとでも評すべきこの取り組みは、現代人にとって新しい知見と感性を切り開く可能性をもっていると思われる。中沢氏の独創性とトリックスター的な役割は、人文学のみならず、多くの分野に影響を与えた。

第27回南方熊楠賞(自然科学の部)

加藤 真 氏

 昆虫と植物など多様な生物が複雑に絡み合う共生関係を解き明かし、生態学研究を大きく発展させるとともに、その分野で活躍する多くの研究者を育てるなど人材育成にも貢献している。

第28回南方熊楠賞(人文の部)

櫻井 治男 氏

 神社合祀問題について、三重県下を主なフィールドワークの対象として「行政村」単位での合祀の事情を具体的に明らかにするとともに、従前ほとんど注目されていなかった、合祀後の地域社会の様相や祭礼行事の持続と変容の内容を解明することに独自の視点を据えて、その結論を導き出している。

第29回南方熊楠賞(自然科学の部)

馬渡 駿介 氏

 一貫して無脊椎動物の種分類学に関する研究に邁進し、特に苔虫動物門に属し淡水から海水に生息する、コケムシと呼ばれる群体性の固着生物の研究に注力。多くの新種を含む日本産コケムシ類の種類相を明らかにした。また、世界中のコケムシ標本との比較研究も行い、いくつかの科・属・種についての分類体系に改訂を加えた。広範な無脊椎動物についてフィールドにおける丹念な調査・研究に基づき種を記載・分類するという姿勢は、熊楠翁の精神に通じるものがある。

第30回南方熊楠賞(人文の部)

北原 糸子 氏
 災害社会史という知の新たな領域の開拓者であり、災害時における人間行動の研究や情報メディアの社会史的な分析は先駆的な研究として評価されている。また、災害史を歴史学だけの専有物とすることなく、理工学分野の研究者との協同において切り拓いてゆこうとする姿勢が、災害研究分野における「文理融合」の起点の一つになったといえる。東日本大震災後に何度も被災地に足を運び、調査を行う北原氏の姿には、在野の研究者であり、フィールドの人であった南方熊楠を思い起こさずにはいられない。