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在米時代の切手帳

 熊楠蒐集の切手帳は1887(明治20)年前後のもの1冊(88頁)、1888年のものと思われる1冊(91頁)がある。1887(明治20)年3月26日の日記には「本日迄集る所、郵券は311枚、46ヶ国也」とあり、1927(昭和2)年には「貼る所の郵便切手として2冊合わせて2229枚」と記している。
 切手帳の序文には、「金門の月はこの夕べ如何、道近しといえども到るあたわず。費府の花は今日如何、道遠くして往くあたはず。耳に入るは日々ケイブルカーの音、眼に触るは夜々電燈の光。厳しく名利に羈せられて汗垢を忍ぶ殊方異域のことにしあれば、親しく訪はるる友すくなく、?中黄白惜しむに堪えたれば、いたずらになげうちて青州従事(酒の異称)を覓るを得ず、只此一小冊、時々取出して打かへして見るに、よく我をして余念なきに至らしむるは、今の我身の小仙窟なるかも。
 音にきく国ぐにぶりをひとながめ
 明治弐拾歳参月弐拾七日夜八時過 米国桑港スチブソン街羈客 日本紀伊人 南方熊楠」とある。