南方熊楠邸

半生過ごした旧邸を公開

南方熊楠は1916(大正5)年からこの邸に住んで、菌類や植物、民俗学などの研究に打ち込みました。敷地面積は約400坪(1334平方メートル)。元は田辺藩士の屋敷だった広い宅地を分筆したもので母屋、土蔵、貸家などがありました。書斎は、転居前に住んでいた借宅から移築しました。
邸内には大きな楠や柿、みかんの木があり、顕花植物も数百種ありました。柿の木から新種の変形菌(粘菌)を発見するなど、庭は研究園そのもので、お手伝いさんは落ち葉を掃除するにも気を遣ったといわれています。
熊楠の没後、長女文枝さんが邸とともに、貴重や書物や文献、書簡、標本などを保全し、これらは文枝さんの亡きあと、その遺志で田辺市に寄贈されました。傷みが激しかった建物は2006年、顕彰館の建設に合わせて熊楠存命当時の姿に復原されました。

【図説明】南方熊楠存命中の邸内復元図(絵/橋本邦子)