キャラメル箱

 1929(昭和4)年、昭和天皇が南紀に行幸され、田辺湾に浮かぶ神島で調査、その後お召艦上で、熊楠がご進講、ご進献を行った。その際熊楠は、大きなキャラメルのボール箱にいれた動植物の標本を献上している。
 後に昭和天皇は渋沢敬三にこう語られたと言われている。「南方には面白いことがあったよ。長門(注、お召艦)に来た折、珍しい田辺付近産の動植物の標本を献上されたがね。普通献上というと桐の箱か何かに入れて来るのだが、南方はキャラメルのボール箱に入れて来てね。それでいいじゃないか」