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ロンドン抜書(1895~1900)

 南方熊楠が巨大な博識と、幅広い文明観を持つに至ったのは、実に5年の年月を費やし、全52巻におよぶこの抜書きの作業を通してのことであった。熊楠が抜書の最初のページに筆を下ろしたのは、1895年5月2日のことであった。満27才、アメリカ放浪を終えてロンドンに到着してから、2年半が経過していた。若き日の熊楠はこの作業を完成させるために自らの情熱のありったけをかけた。ロンドン抜書は南方熊楠という思想家が誕生するすべての過程を閉じ籠めた記録である。毎日、5時間から7時間大英博物館で過ごしており、その時間の多くが抜書きに費やされたと思われる。ロンドン抜書は異邦にあった熊楠が自分が成し遂げるべき「大事」として構想されたものであった。52冊のノートは英・仏・独語で書かれた民俗学・博物学・旅行記の筆写からなっているが、世界各地を旅行した冒険家たちの旅行記や現地での観察者による地誌が世界を網羅する形で取り入れられており、世界の民俗風習の大事典となっている。(全52巻のうち第5巻、第6巻、第52巻は南方熊楠記念館所蔵)